原作コミックスを基にしたアニメ化には、概ね2つの傾向がある。
第1に、原作のストーリーはそのままにして、アニメでできる演出、すなわち作画の向上やエフェクトで、作品自体の魅力を引き上げるもの。
そして第2は、原作のストーリーは基本としながらも、セリフを大幅に変えたり、ときには原作には無いシーンを追加するものである。
今期でいえば、「よふかしのうた」は第1のパターンだ。原作は読んでいないけれど、作画の向上と効果的な演出が施されていて、原作よりもさらに面白くなっているように感じる。
そして、異世界薬局は、第2のパターンといえる。
今回は、薬師ギルドのメンバー、ピエールがファルマの知識と振る舞いに感銘を受け、それがもとで薬師ギルドをクビになってしまうが、ファルマのギルドに加わり、新たな人生を踏み出すという、個人的には「異世界薬局」の中でも最も好きなエピソードだ。
その中で、けっこう大きな脚本の改変が行われた。まずは、ピエールが夫婦で薬師ギルドとの関係を悩むシーンである。
会話の途中で、ピエール夫妻は突然泣き出してしまう。
このシーンには、かなりの違和感があった。泣くほどの状況になっているようには思えなかったが、それは自分だけだっただろうか。
そしてもう一つ、薬師ギルド長には、息子を失った過去があり、それなりの自負を持って薬師ギルドを保とうとしているようなシーンが描かれた。
これも、説得力が不足している。ファルマが異世界薬局を開こうとしているときにファルマに突っかかったり、馬車を乱入させたりする、そんな悪どいことをする輩が言うセリフとしてはかなりの違和感があった。
原作では薬師ギルド長は、これまでの薬師としての立場をいいことに悪どい商売を行う、単純な「悪」として描かれた。そんな流れできているのに、無理やりそんなセリフを入れるのだから、違和感が生じるのは当然のことではなかろうか。
どうしても入れるのなら、馬車のシーンはカットすべきだった。ここまでの流れを考えれば、特に無くても良かったんじゃないか。
アニメ「異世界薬局」では、原作の流れに沿わない改悪と思われる点が多く、原作ファンとしては残念でならない。